こんにちは,masART STUDIOのカワグチです。今回は,簡単にできる建築写真のゆがみの補正についてご紹介します。
建造物や樹木を下から見上げるように撮影すると、上に行くにしたがって小さく窄んでしまします。しかし,建築関連の書籍や,不動産関連のカタログでは,まっすぐに撮影された建物をよく目にします。このように,縦のラインが垂直に写るようにゆがみを修正することを,アオリ撮影もしくはアオリ修正と言われています。
アオリ撮影とは
そもそも,アオリ撮影とは光軸をずらすことでゆがみを補正したり,光軸を傾けることで被写体全面をシャープに撮影する特殊な撮影技法です。一眼レフカメラでは,あおり撮影に対応したベローズユニット(蛇腹状の機器)や,シフトレンズを用いて撮影します。

- 光軸をずらして撮影する技法
- ライズ(Rise):被写体に対してレンズ面を上に移動して撮影。主に建物写真のゆがみを補正します。コンピュータ上の処理でほぼ同様のことが可能。
- フォール(Fall):被写体に対してレンズ面を下に移動して撮影。主にブツ撮りのゆがみを補正します。コンピュータ上の処理でほぼ同様のことが可能。
- シフト(Shift):被写体に対してレンズ面を左右水平方向に移動して撮影。主に反射する被写体にカメラが写り込みを防止します。

- 光軸を傾けて撮影する技法
- チルト(Tilt):レンズ面を上向きもしくは下向きに傾けて撮影。ピントの合う範囲を狭めて特定の部分を強調したり,逆に画面全体にピントを合わせることができます。
- スイング(Swing) :レンズ面を左向きもしくは右向きに傾けて撮影。斜め方向にピントの調整を行うことができます。

アオリ撮影を画像処理で
再現できること・できないこと
残念ながら,コンピュータ上の画像処理によって,すべてのアオリ撮影を再現できるわけではありません。
画像処理で再現できること
ライズ撮影やフォール撮影とほぼ同様な補正,つまり被写体のゆがみを補正することができます。また,アオリ撮影とは関係ありませんが,水平のとれていない画像や,画面の傾きも補正できます。
画像処理で再現できないこと
撮影後の画像データに,レンズの特性を生かした表現を付け加えることは至難の業です。
たとえば,斜めに奥行きのある被写体があったとします。手前に焦点が合っている撮影後のデータに対して,画像処理で被写体の奥まで焦点を合わすことは不可能です。
また,反射する被写体に写り込んだ,カメラや撮影スタッフを取り除くのも,非常に手間がかかります。ただ,Adobe社が開催しているイベントでは,新たな人工知能を使用した画像処理技術が次々と発表されています。今後に期待しましょう。
建物のゆがみを取り除こう
例として,集合住宅の写真のゆがみを取り除いていきます。ちなみにこの集合住宅は,かつて洗足池駅周辺に建っていた東京都の職員住宅です。現在は取り壊されて存在しないため,サンプルとして使用します(入居者が退去した後に撮影しました)。

今回は,Adobe Lightroom(アドビ ライトルーム)で画像処理を行います。ここでは,Classical版でなくクラウド版(バージョン2.1.1)を使用します。また,編集対象の画像が,既にLightroomに取り込まれていることを前提とします。








完成
Before After
今回は,Lightroomで行う簡単なアオリ補正を紹介しました。
このようにLightroomを使用することで,簡単にアオリ補正を行うことができます。しかし,撮影時には注意が必要です。サンプル写真を見比べていただければお分かりかもしれませんが,画像処理の過程でかなりの部分が切り取られます(画面左側にあった,踏み切りの遮断桿が完全に切り取られています)。撮影時はトリミングすることを念頭において,余裕をもって被写体を収めるといいでしょう。
最後までご高覧いただきましてありがとうございました。